今日、たまたま実家の氷取沢に戻ったので、 久しぶりに「がんこ亭」に行った。 久しぶりというレベルではなく十数年ぶりというレベルである。 少なくとも十年は下らない。 ここは、俺が初めてラーメン屋のラーメンを食べた、言わば我がラーメン道の原点である。 カウンターに座る。 新しく張り替えされているものの、増田製麺の真宏麺を使用している云々の張り紙、大盛完食で「大盛麺喰之証」がもらえる云々の張り紙が同じ位置にある。変わらない。 親父さんも健在だ。 強いて変わった点と言えば、入口入って右のテーブルが二つから一つになったことくらいか。 本日が本年最後の営業日であるようだ。運がいい。 麺を固めで注文し、しばし待つ。 その間にも客は来店し、10席ちょっとの店内はほぼ満員となる。 そしてついにラーメン並が運ばれてくる。 卓上の白髪ネギ入れ放題も健在だ。 スープを一口すする。 思ったよりあっさりしたスープに少々驚いたが、記憶を呼び起こすのに、そう時間は掛からなかった。 後からついてくるこの醤油ダレと椎茸?と思われるダシのコクが広がり、「あぁ、これだ」と懐かしくなる。 例の真宏麺はと言うと、ツルツルしているストレートな麺だった。今思うとそんなに太くはなかったんだな。 一番通っていたのは小学生の頃だったから、もっと太く感じたのかもしれないし、スープももっと濃く感じたのかもしれない。 冒頭でも述べたが、 この店は俺がラーメン屋のラーメンを食べた初めての店だ。 土日の昼はカップラーメンが多かったが、俺も小学生中学年・高学年になり、父親が連れて行ってくれたのが最初だった。 ラーメンと言えばカップラーメンしか知らなかったから、初めて食べた時、どことなく贅沢な気持ちだったし、又ラーメンがこんなにうまい食べ物なのかと気付いたきっかけとなった。 そして小学6年の頃だったと思うが、友達数人で大盛に挑戦し、見事「大盛麺喰之証」を手にした。 あの時の気持ち悪さは今でも覚えている。店員に「無理しなくていいんだよ。」と言われたことに対し、意地でも食ってやると思い完食した。 今であればスープにお酢を入れればサッパリして飲みやすくなることを知っているが、当時はそんな術を知る由もなく、ただひたすら自分と戦い、手に入れた勲章だった。 大盛を完食できたことが、大人の仲間入りを果たすことができたようで、ちょっぴり嬉しかった。 …そんな思いが頭の中を回想してる間に、しっかり完食。 コクがありつつ飲みやすい。 ごちそうさま、と言う言葉が素直に口をついて出た。 がんこ亭は俺の物心ついた頃から営業しているから、少なくとも二十数年は営業している。 入れ代わりの激しい昨今、二十数年以上も同じ場所で同じ味を提供し続けることは容易ではないはずだ。 うまいラーメン屋は数知れど。しかし俺は「がんこ亭」に敬意を示したいし、また来たいと思う。 何故ならこの店は何にも代えられない、俺の原点の店なのだから。 終わり